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あずまがわ小児科クリニックブログ

追悼 半藤一利さん

2021年3月26日        

令和3年1月90歳で亡くなられました。半藤一利さんといえば左派の反戦論者といったイメージがありました。文芸春秋3月号(週刊文春とは違います)に追悼の特集がありました。戦争中に少年時代を過ごしたので私の親世代だと思います。読んでみると徹底した戦争への憎悪を感じます。東京大空襲によって尊厳などかけらもなく真っ黒になった遺体を目の当たりにした戦争体験を秋篠宮悠仁殿下にお話しされたそうです。洞察力に優れた方で大本営の日米開戦前の戦争の見通しについて、辛口な論評をされていました、つまり、日本が負けるかもしれない最悪の想定がなかった、起きて困ることは起こらない?という日本人の悪癖に警鐘を鳴らしておられました。コロナ対応然り、原発が地震で被害を受けたのもそうだと思います。私の母親も戦中派で記憶の確かなうちに戦争のことなど口述してくれたらと思っていましたが、おそらく一人亡くなったと思われる妹のことなど、はっきりとは言いませんでした。焼夷弾が上から‘ひゅるゅひゅる’って落ちてきて、真上に落ちてくるかもしれない経験をしたら、今でいうPTSDどころじゃないでしょうけど、昔の人たちはそんなこと、だれも助けてくれないから、だれに訴えるでもなく、とにかく前に進んで生きていったのです。一方で、じゃあ戦争反対を唱えていると戦争は起こらないかといえばそうではないと思います。隣国から侵略されないよう、絶えずメッセージを送り続けないといけません。右派とか左派とかではなくて、リアリストとして目の前にある危機を認識することが必要です。今朝の新聞に中国の台湾侵攻間近、北京五輪の後に侵攻のリスクとありました。台湾が侵攻されるとすれば、尖閣諸島や与那国島も危ない、危機に備えねば、といっても竹やりを持つのではなくて、外交的に戦争を仕掛けてこないようなメッセージを送り続けないといけないのですね、そういう努力の上に平和があるのだと思います。

ところでTourette研究会に入会させていただいていることもあって、チック症の患者さんを拝見する機会が多いです。チック症(短時間の素早い反復する無目的に見える常同的な運動)とは異なりますが、不随意運動の一つにジストニアというものがあります。後者の定義は持続性の筋収縮を呈する症候群であり、しばしば捻転性または反復性の運動や異常な姿勢をきたす、というもので、その特徴として、定型性(症状が変転しない)、動作特異性(特定の動作によって症候が出現したり増悪する)、感覚トリック(特定の感覚刺激でジストニアが軽快・増悪する)、オーバーフロー現象(動作時に本来不要な筋が不随意に収縮する現象)、早朝効果、フリップフロップ現象(何らかのきっかけ、あるいは誘因なく急に増悪、軽快する現象)などがあります。その一つの感覚トリックというものは、まさにチック症の治療として行われつつあるCBIT(Comprehensive 包括的な Behavioral 行動療法的な Intervention 働きかけfor Tics チックのための)にも応用されているのではないかと思いました。チックとジストニアは異なるものですが、その患者さんがどちらかというのではなく、それらが併存することもあるのではないかとも思うようになりました。CBITトレーニングに興味がわいてきました。

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